2006/03/17

ホムンクルス・キベルネティクス卿回答書

信愛すべきサァ・スチュワート・カンタベリー殿!

報告司祭の書面、本日夕刻に拝受致しました。
貴殿の苦しみ、これは私どもの痛みでもあり、同じ天蓋に住まうものであればこそ、血と肉をともに分かち合うがごとく、その苦悶すら常に分かち合おうというもの。大鉈を振るった者にしか分からぬあの罪深き快楽、かっ裂いた贄牛の腹から一本そしてまた一本と引っこ抜かれる血の滴る肉、それは貴殿の苦しみの元となるスペアリブであります。喩えとしてはやはり皮肉なものでございますが、私の頭蓋の毛根もこのスペアリブの如き運命。その苦しみは比べるまでもございませんが、しかし貴殿の苦痛は快楽が一つ一つ抜き取られ、浄化されていることを暗示してはおりませぬか。風化していく私の頭皮はもはや誘惑に堪え忍ぶべき試練として与えられた砂漠、この荒れ果てた地には悪魔が仕掛けた罠で足の踏み場もございません。されど、これは神の試練、この悔い改めをもって至福を願われておられるのではありますまいか。

最後に。
不躾な文面、何卒御寛恕頂きたく存じます。荒地にある貴殿の苦悶が一刻も早く癒されんことを切に祈りつつ。ドミヌス・テークム!

あなたのホモンクルス・キベルネティクスより

写真協力:スー・フランソワ・バトラー宣材写真本舗

「ある教管区でのこと」司祭報告:サー・スチュワート・カンタベリー特派員

2612年109月2.26日(パカパカ)

私の管区では最近、色々と物騒なことが起こっております。先日も、犬に噛みついた男がおりました。そこで、

「一体どうしたのだ、下僕よ」と聞いてみますと、
「犬が悪口を言ってくる」というのです。

医者に診せてみますと、その医者も同じような苦情を私に投げかけてくるのです。”困ったものだ、医者がこれでは困る。どうすればいいのやら...”と思いあぐねておりましたら、耳の奥で声が聞こえてきたのです。

「あいつは犬じゃない、悪魔の手先だ、やってしまえ、やってしまえ...」

私は怖ろしくなりました。身近な者が狂気にある時、周囲の者も感染することがあると聞きます。私も同じように気が触れてしまったのかと思い、救われたい一心で祈りを捧げました。すると、今度はこれまでとは違う声が聞こえてきたのです。

「...ふむ、このスペアリブ、どこで買ったの?うまいや... モグモグ」

これがもう一ヶ月も続いています。未だに、神の声は聞こえません。

どうすればいいのでしょうか、誰か教えて下さい。

ノウの発達と野蛮の尺度

宇宙、少なくともこの地球上では神の思考実験、つまりそれはすでにホンチャンの実験として、脳細胞増殖計画が進行中である。

脳は進化しているのか、という問いは愚問で、すでにその進化速度も限界域に達し、もはや下降線を辿って久しい。その代表格がホモ・サピエンスである。何も道具を持ち、言葉を話すからといって、偉そうにふんぞり返ることの出来る時代はとうの昔に過ぎ去り、いまやこの忌まわしき聖なる実験をうっちゃって、自分たちのプログラム(遺伝子)を改竄して、この肥大しきってだらしなく腹の出た脳味噌は丁度お手頃サイズのコンパクト・ブレインに変えられようとしている。どんな野蛮なことをしても、「脳が小さいからしかたないじゃん」という言い訳をするためだ。脳はもはや盤石ならぬ、蛮尺となって、この世を憎悪する。これが神の宇宙開発である。ウキッ。