2006/05/15

ディラン・トーマス「すべてのありとあらゆる」


I
ありとあらゆるすべての乾く世界が迫り上がる、
氷の舞台、硬直の大洋、
すべてが油から、溶岩の生け簀から、迫り出す
春の都市、その操りの華は、
灰燼の町と化する地中で、
火ぐるまに身をまかせてくるりと回る

どういうことなのか、我が肉にして剥き出しの友よ、
海の乳房、腺に彩られた東雲、
蛆の潜り込む、杭入れと休閑期の頭皮は
ありとあらゆるすべての乾く世界は、むくろの恋人よ、
原罪の如く痩せこけてしまった泡吹く髄よ、
肉体のすべてよ、乾きの世界は梃子で持ち上がる

II
懼れるでない、目覚めんとする世界を、我が死すべき者よ、
懼れるでない、味気ない合成血液を、
肋骨金属に収まった心臓もだ
懼れるでない、まぐわいの踏み板や種なしの臼碾きを、
引き金や大鎌、婚礼のナイフを、
恋人が酷い仕打ちに打ち付けてくる火打ち石もだ

我が肉たる男よ、砕かれた顎骨よ、
さあ知るがいい、肉体の獄門と悪徳を
そして、大鎌の目をした放蕩児を捕らえ置く篭のことを
知るがいい、おお我が骨よ、骨付き肉の梃子を、
懼れるでない、声を裏返らせて、
追い詰められた恋人に顔を向けさせるネジのことなど

III
ありとあらゆるすべての乾く世界はまぐわう、
亡霊女は亡霊男とともに、感染病の男は
未だ形知らぬ自らの諸人を宿す子宮とともに
すべてに形を与える胞衣と授乳、
機械仕掛けの肉がする我が肉への愛撫は、
これら世界にある死の円環をなだめつける

華で飾れ、飾れよ、諸人の融解を、
おお、絶頂の光よ、まぐわいし蕾を、
肉のまぼろしに視る焔を飾れ
海より迸る出る油を、
穴と墓石、真鍮の血を、
飾るのだ、飾れ、すべてのありとあらゆるものを